2024 年 61 巻 3 号 p. 245-251
出血性疾患や血栓性疾患において,その病態を理解し鑑別および治療することが重要である.これらの病態把握や鑑別診断に凝固波形解析を応用した.まず,凝固異常症(APTT延長要因)に適応した.APTT延長要因として,凝固因子欠乏,凝固因子インヒビター,ループスアンチコアグラント(LA)が挙げられる.因子欠乏やインヒビターでは出血傾向を呈するが,LAでは血栓傾向を呈することが多い.凝固波形解析をクロスミキシングテストに応用し,短時間かつ高精度な鑑別法を構築した.また,凝固波形解析にテンプレートマッチングを導入することにより,Factor (F) VIII活性を測定することなく,FVIII欠乏を判定するシステムを開発した.次に,抗凝固異常症への応用(血栓素因のスクリーニング)を試みた.血栓性疾患としては,プロテインS,プロテインC欠乏などに加えて,FV異常症も血栓素因となりうる.現在,本邦において,これらの血栓素因をスクリーニングする手法はない.我々はトロンボモジュリンの存在下,非存在下における凝固波形解析により,血栓素因をスクリーニングする手法を開発した.最後に,凝固線溶異常への応用(凝固線溶のバランス評価)を行った.血栓機序の解明が求められたCOVID-19感染における凝固病態の把握を目的として,組織プラスミノゲン活性化因子を添加した凝固線溶波形解析を施行した.その結果COVID-19感染においては播種性血管内凝固症候群とは異なる状態であることを明らかにした.