小児血栓症は希少であったが,医療の進歩と認識の広がりから増加傾向にある.遺伝性血栓症は発症年齢で表現型と遺伝素因が異なる.小児の止血血栓機構は成熟過程にあるため測定値のみでは診断できない.我々は活性値の年齢別基準範囲と判別式を設定し,遺伝子検査のアルゴリズムと診断基準を提案した.成人領域の研究班と診断基準が共有され,特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る)が指定難病に追加された.
小児血栓症では血栓溶解,特異的補充,抗凝固療法等のエビデンスは乏しい.新生児に発症する遺伝性プロテインC欠乏症の多くは電撃性紫斑と頭蓋内血栓症で発症する.生存者の神経学的予後は厳しく,四肢切断や視覚障害に至る.繰り返す紫斑に対して,有効な予防・治療管理法は確立していない.発症家系には未発症病的バリアント保有の可能性がある.妊娠と出産は母子の血栓症の誘因となる.未発症保有者への治療管理のエビデンスは存在しない.私たちは新生児から成人期までに発症する血栓症のうち,遺伝性素因の関与が強いものを早発型遺伝性血栓症(EOT: early-onset thrombophilia)ととらえて,その診療指針を策定した.