2025 年 62 巻 5 号 p. 272-276
血友病治療は,凝固因子製剤による出血時治療から,凝固因子製剤や第VIII因子代替製剤による出血抑制治療へと大きく転換した.近年,凝固制御因子を阻害もしくは低下させ,凝固と凝固制御のバランスを是正することで出血抑制を図るrebalancing therapyが開発され,tissue factor pathway inhibitorに対するモノクローナル抗体製剤であるconcizumab,marstacimabの2剤が上市された.いずれも血友病治療薬として初めてのペン型注入器による皮下注射製剤である.前者は12歳以上の血友病A/B患者に,後者は12歳以上のインヒビター非保有血友病A/B患者に承認されているが,いずれも12歳未満の小児に対する適応はない.前者は,バイパス止血製剤の定期投与による出血抑制効果が不十分なインヒビター保有血友病B患者に朗報である.一方,適切な薬効モニタリング法,感染症や動脈硬化症下での安全性に関する課題が残されている.現在,RNA干渉によりアンチトロンビン産生を低下させるfitusiranの臨床試験も進んでいる.患者および医療者がrebalancing therapyの作用機序をよく理解し,利便性だけに目を奪われることなくshared decision makingのもとに慎重に適応を検討し使用する必要がある.