2021 年 12 巻 5 号 p. 744-750
はじめに:2012年椎体骨折評価基準が改訂され偽関節は発症後12ヶ月経過しても治癒にいたる可視的な兆候が認められないものと明文化された.しかし偽関節の臨床像は不明な点が多い.
対象と方法:2012年1月~2019年2月にOVFとして入院治療した全684例中一年後まで経過観察可能であった551例(平均年齢81.9±7.4歳,男性:女性=152:399)を対象とし,偽関節の発生頻度・危険因子・ADLへの影響を調査した.危険因子は目的変数を一年後の偽関節,説明変数を全身骨密度,SMI,性別,年齢,骨粗鬆症治療歴,認知症の有無,骨折椎体後彎角,後壁損傷有無,入院前生活自立度,ステロイド内服歴,アルブミン値,eGFR,糖尿病有無,DISHの有無に設定し多変量解析を施行した.ADLへの影響は歩行能力,日常生活自立度に対して偽関節が影響をおよぼしているかを検討した.
結果:一年後に54例(9.8%)が偽関節と診断された(平均年齢81.3±6.5歳,男性:女性=18:36).偽関節化に有意に影響を及ぼす因子は多変量解析の結果,後壁損傷有のみであった(OR=2.059,p=0.039).偽関節群と非偽関節群で一年後歩行能力,日常生活自立度に有意差はなかった.
結語:OVF後偽関節の発生率は9.8%,その危険因子は後壁損傷であった.