【緒言】咽頭・頸部食道のがん性狭窄による唾液の嚥下困難は流涎の原因として重要で,貯留唾液の吐出を常時強いられ患者にとって著しい苦痛である.【症例】87歳,女性.下咽頭がん放射線治療後再発.「痰がひっきりなしに出て眠れない」と訴え,唾液を吐出する動作を終日繰り返していた.ベタメタゾン8 mg/日の静脈投与により症状は投与翌日までに改善した.唾液の嚥下困難はSTAS-Jスコアでは治療開始日4から治療開始2日後には1まで改善し,1週後ベタメタゾン2 mg/日まで漸減したが症状緩和は維持された.ベタメタゾン中止までの約2カ月の投与期間に症状再燃は認めなかった.【考察】がん性狭窄に対し,ベタメタゾンの抗炎症効果が速やかに著効し月単位で維持できる可能性をSTAS-Jを用いて示しえた.【結論】唾液の嚥下困難に関わる苦痛が強い時,高用量ステロイド投与で症状が緩和できる可能性がある.