Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
症例報告
がん性イレウスに伴う悪心・嘔吐に対し漢方薬が有効であった1例
西村 暢子柿原 直樹淺野 耕太神田 英一郎河端 秀明能勢 真梨子西谷 葉子三上 正井川 理
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2014 年 9 巻 4 号 p. 533-537

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抄録

症例は38歳,女性.進行胃がん術後8カ月目にがん性イレウス発症し入院となった.悪心・嘔吐に対しドンペリドン坐剤・メトクロプラミド注射液・ハロペリドール注射液が開始されたが,アカシジアを合併し投与中止となった.そこで,六君子湯氷を作成し提供した.使用開始後より徐々に嘔吐の回数が減少し,自宅へ外出することが可能となった.六君子湯氷使用前は,空腹感や食欲があるにもかかわらず経口摂取不能な状況であることへの悲嘆が強い状態であった.六君子湯氷の服用は,制吐作用と経口摂取できる喜びが得られるため,身体的のみならず心理的な効果も得られる可能性が考えられた.ただ,外出から数日後に意識障害をきたしたので,退院することは叶わなかった.わずか数時間の外出が自宅で過ごす最期の機会となったが「しんどかった.でも家はよかった」という言葉を残して,彼女は外出後約1カ月で永眠された.

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© 2014 日本緩和医療学会
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