Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
9 巻, 4 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
原著
  • ―遺族5,810名の全国調査から
    竹内 真帆, 清水 恵, 森田 達也, 佐藤 一樹, 三浦 世理佳, 今野 美咲, 佐藤 香織, 内山 美里, 高橋 なつき, 泉 佳那, ...
    2014 年9 巻4 号 p. 101-111
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
    【目的】遺族による緩和ケアの評価に関連する施設要因を明らかにすることを目的とした. 【方法】全国の緩和ケア病棟で死亡したがん患者の遺族9,684名を対象に, 郵送による自記式調査と施設背景調査を行った. ケアの構造・プロセスの評価としてCare Evaluation Scale, ケアに対する全般的満足度, 患者の終末期のQOLの評価としてGood Death Inventoryを用い, 施設背景との関連を明らかにするため, 単変量および多変量解析を行った.【結果】有効回答は5,810 (60%)で, 解析の結果, 有意(p<0.05)となった施設背景は, 全室個室, 院内または完全独立型病棟, 緩和ケア医師が当直をする, 1床あたりの深夜勤看護師数が0.1人以上, すべての患者の遺族に手紙送付を実施, すべての患者の遺族に遺族会・慰霊祭を実施, 宗教的背景をもつ, であった.【結論】遺族による緩和ケアの質の評価に影響する緩和ケア病棟の施設要因が示された.
  • 菅野 雄介, 平原 優美, 荒木 和美, 松村 優子, 八杉 まゆみ, 川村 幸子, 古賀 友之, 茅根 義和, 宮下 光令
    2014 年9 巻4 号 p. 112-120
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/25
    ジャーナル フリー
    【目的】Liverpool Care Pathway日本語版在宅バージョン(LCP在宅版)を開発し, 実施可能性を検討する. 【方法】在宅緩和ケアを行っている3施設で, 予後数日と予測されるがん患者を対象にLCP在宅版を使用し, ケアの目標達成状況と看護師を対象に質問紙調査を実施した. 【結果】LCP在宅版を使用した患者は35名であった. ケアの目標達成状況は, 80%以上達成されていた. 対象看護師は, スタッフ間で統一した看取りのケアの提供, 在宅ケア関係者とのコミュニケーションの促進, 看取りのケア経験の少ない看護師への教育においてLCP在宅版を有用であると評価していた. 【結論】在宅緩和ケアの教育支援としてLCP在宅版が開発され, 看取りのケアの教育や在宅ケア関係者間との連携において有用である可能性が示唆された. 英国でLCPの段階的廃止を受け, 今後日本独自の看取りのケアの教育支援を検討していく必要がある.
  • 小田切 拓也, 山内 敏宏, 白土 明美, 今井 堅吾, 鄭 陽, 森田 達也, 井上 聡
    2014 年9 巻4 号 p. 121-124
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/01
    ジャーナル フリー
    セフトリアキソンは, 1日1回の点滴でよく, 腎不全でも使用可能なため, 皮下点滴が可能ならば終末期がん患者に用いやすい. 2013年1月から2014年1月に聖隷三方原病院ホスピス病棟を退院し, セフトリアキソン皮下点滴を使用した患者を, 後ろ向きに抽出した. 主要評価項目は抗菌薬の奏功率(3日以内の症候の改善)で, 二次的評価項目は刺入部の炎症反応と, 他の抗菌薬の奏功率との比較である. 患者から包括的同意を得た. セフトリアキソン皮下点滴を用いたのは10人(尿路4人, 肺4人, 軟部組織2人), 奏功率は0.70 (95%信頼区間0.39~0.89)だった. 全員, 刺入部位に炎症反応を認めなかった. 他の抗菌薬使用者は16人19回, 奏功率は0.74 (同0.51~0.88)で, 両群の効果はおおむね等しかった. セフトリアキソンの皮下点滴は, 血管確保が困難な終末期がん患者の感染症治療において有用である.
  • 宮原 強, 小杉 寿文, 仁田 亜由美, 濱田 献, 日浦 あつ子, 森 直美, 八谷 由貴, 平川 奈緒美, 佐藤 英俊, 松永 尚
    2014 年9 巻4 号 p. 125-130
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【目的】当院ではオキファスト®注(OXJ)の換算比として簡便な 「OXJ:モルヒネ注射剤:フェンタニル注射剤=1:1:1/50」 を用いているが, 妥当性を検討した報告はない. 【方法】OXJに切り替えたがん疼痛患者18例を対象に臨床的検討を行った. 【結果】OXJへの切り替え理由としては, 鎮痛効果不十分11例, 内服困難6例, 傾眠1例であった. 疼痛コントロール達成までの投与量調節に要した日数は平均0.6日であった. 鎮痛効果不十分例ではOXJ変更前後のnumeric rating scaleは3.3から1.1と有意な改善効果が認められ(p=0.007), 内服困難例では変更前後で同等の疼痛管理が得られた. OXJ変更による有害事象の悪化は認められなかった. 【結論】OXJへのオピオイオド・スイッチングに対し, 簡便な換算比を用いても, 臨床での疼痛コントロールや有害事象における問題は特に認められなかった.
  • 菅野 喜久子, 木下 寛也, 森田 達也, 佐藤 一樹, 清水 恵, 秋山 聖子, 村上 雅彦, 宮下 光令
    2014 年9 巻4 号 p. 131-139
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/15
    ジャーナル フリー
    東日本大震災後のがん患者の緩和ケア・在宅医療については, ほとんど調査がされていない. 本研究では, 震災時のがん患者の緩和ケアと在宅医療の実態を明らかにし, 今後の大規模災害に向けたシステムの提言やマニュアルの整備のための基礎資料を作成することを目的とした.被災沿岸地域の医療者53名に半構造化面接を行った. 結果より, がん患者の緩和ケア・在宅医療に対する医療者の経験は, 【がん患者への医療提供の障害】【津波被害や避難の際に内服薬を喪失した患者への服薬継続の障害】【ライフラインの途絶による在宅療養患者への医療提供の障害】【地域の医療者と後方医療支援や医療救護班との連携の障害】【医療者に対する精神的ケア】【原発事故地域の医療提供の障害】の6カテゴリーに整理された. 大規模災害に向けた備えの基礎資料となり, 災害時のがん患者の緩和ケア・在宅療養に関する問題やその対応方法について明らかとなった.
短報
  • 村上 真基, 山本 直樹, 竹内 裕, 小林 友美, 佐藤 裕信
    2014 年9 巻4 号 p. 301-305
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/24
    ジャーナル フリー
    【目的】Liverpool Care Pathway日本語版(以下, LCP)使用例と非使用例の分析と検討を行った. 【方法】2013年3~12月に当病棟で死亡退院した患者を対象に, LCP使用群71名と非使用群60名の診療録後ろ向き調査を行った. 【結果】使用群と非使用群の患者背景に有意差はなく, 非使用群は急変死が有意に多く, 深い持続的鎮静施行が有意に少なかった. 使用群の平均使用期間は4.0日で, 開始基準は全例3項目以上に該当していた. 初期アセスメントは1名を除き達成されていた. 非使用群の理由は, 急変のため35名, 急速な病状変化のため14名, 転倒・転落リスクへの対応のため4名などであった. 【結論】使用群では使用基準を満たして適切な時期に開始されていた. LCPは開始基準該当の全患者へただちに使用するのではなく, 急変・急速な病状変化のある患者, 転倒・転落リスクのある患者では非使用となりうることが明らかとなった.
  • 小川 雅子, 作左部 大
    2014 年9 巻4 号 p. 306-311
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/07
    ジャーナル フリー
    【目的】終末期がん患者では, 口腔内の諸問題を生じやすい. 今回, がん診療連携拠点病院である当院の看護師に対して口腔ケアについての意識調査を行い, 今後の看護への方策を検討した. 【方法】当院の終末期がん患者のケアに携わる病棟看護師197名に, アンケート調査を施行. 【結果】有効回答数は159名(81%). 終末期において口腔ケアが必要と感じている看護師は153名(96%)だったが, ケアが十分に行えていると感じる看護師は29名(18%)であった. 【考察】終末期口腔ケアの必要性を認識しているが, 十分に行えていない現状が明らかとなった. 歯科連携においては, 症状緩和や口腔ケア, 支持療法としての依頼は不足している現状が判明した. 今後, どのように病院外の歯科と情報共有し連携を図っていくかについては課題である.
症例報告
  • 木本 志津江, 砂田 祥司, 柴崎 千代, 小川 喜通, 實森 直美, 清水 洋祐, 國冨 留美, 小川 弘太, 市場 泰全
    2014 年9 巻4 号 p. 501-504
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/04
    ジャーナル フリー
    【目的】難治性嘔吐に対しオランザピンを使用し, 経過途中でせん妄, 痙攣が生じた症例を経験したので報告する.【症例】70歳代, 男性. 肺がん. 化学療法後, 持続する嘔気・嘔吐に対し, オランザピンを使用した. せん妄が出現し, その後, 痙攣が出現した. せん妄のリスク因子の除去後もせん妄症状の改善がみられなかった. オランザピン中止後, せん妄症状が改善した. バルプロ酸を使用し, その後痙攣発作は生じなかった.【結論】オランザピン中止後, せん妄は改善し, 痙攣発作も消失したので, オランザピンがせん妄や痙攣発作の要因であった可能性が考えられた.
  • 小林 瑞保, 山口 芳文, 稲邊 惠津子, 萩原 千寿子, 加登 大介, 高谷 久史, 長谷川 久巳, 岸 一馬, 井田 雅祥
    2014 年9 巻4 号 p. 505-509
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/09
    ジャーナル フリー
    【目的】せん妄を合併したがん患者に対する作業療法の効果を示した報告は少ない. 今回, がん性髄膜炎に伴うせん妄患者に対する作業療法によりQOLが向上した1例を経験したので報告する.【症例】原発性肺がんにがん性髄膜炎を合併した60歳代女性. 食事動作への支援とともに作業歴を聴取し, 趣味を考慮した作業活動を導入した. 作業療法開始から転院までの間, 認知機能やPSに変化はなかったものの, せん妄がありながらも作業中は集中して取り組むことができた. また, ライフレビューや他者との交流, 思いの表出を促していた.【結論】作業療法により, 焦燥・不安あるいは孤独感などの緩和につながり, QOL向上の一助になったと考えられる.
  • 舘野 佑樹
    2014 年9 巻4 号 p. 510-513
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    【症例】肝臓がんによる黄疸の難治性掻痒感に対してオキシコドンが著効した,59歳男性の1治療例につき報告する.【考察】掻痒感は悪性腫瘍の合併症として,時に問題となる.掻痒感の発生機序は依然不明な点が多いが,内因性オピオイドやオピオイドレセプターが病態に関わっていることが示唆されている.掻痒感のない患者へのオキシコドンなどμオピオイドレセプターアゴニストの全身投与の副作用として掻痒感が知られている.しかし,オキシコドンはμオピオイドレセプターに結合しても内因性オピオイドより弱い活性しかもたないため,内因性オピオイド活性が亢進した状況で投与されると相対的な拮抗薬として作用し,止痒作用を発揮したと考えられる.本症例報告をもとに,悪性腫瘍による黄疸の掻痒感の病態と治療につき新しい知見が得られることを期待する.
  • 大井 裕子, 林 裕家
    2014 年9 巻4 号 p. 514-518
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/07
    ジャーナル フリー
    オキシコドン経口徐放剤はがんに伴う疼痛を有する患者に広く使用されている. これまで病状が変化して内服が困難になった際には, 複方オキシコドン注射剤, モルヒネ注射剤, フェンタニル注射剤または貼付剤に変更して除痛が図られてきたが, オキシコドン注射剤が発売されて経口剤から注射剤へ同一薬剤でのスムーズな移行が可能となった. 経口剤から注射剤への換算比は複方オキシコドン注射液で71~73%という報告があり, 海外でのオキシコドン単一成分の注射薬で比較したものでもほぼ同等といわれているが, 日本でこれに関する報告はまだない. 当院で2012年6月から12月までにオキシコドン経口徐放剤から注射剤に変更した8症例について, 痛みと眠気のバランスをみながらタイトレーションを行い, 5症例について変換比の評価が可能であった. 経口剤から注射剤への換算比は平均46.4%で, 注射剤が原因と考えられる有害事象も認められなかった.
  • 山田 英人, 松本 禎久, 木下 寛也, 川越 正平
    2014 年9 巻4 号 p. 519-522
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    メサドンは長時間作用型μオピオイド受容体作動薬であり,NMDA受容体拮抗作用を併せもつため,一般のオピオイドに抵抗性の疼痛に対する効果が期待される.一方で,重大な副作用として,呼吸抑制やQT延長症候群・心室頻拍があり,注意を要する.今回われわれは,入院中にメサドンが導入され,訪問診療中にその増量を行い,安全に鎮痛効果が得られた症例を経験したので報告する.症例は79歳,女性.後腹膜原発平滑筋肉腫の術後に局所再発をきたし,以後,右鼠径部に灼熱感を呈する突出痛が頻回となった.放射線照射後,オキシコドンに加え鎮痛補助薬の併用がなされたが,眠気などの副作用が強く,効果も乏しかった.オキシコドンからメサドンに変更後は,突出痛の頻度は激減した.退院後の処方管理に関して地域内の多職種協働を意識した周到な準備のもとで,退院後の疼痛悪化時には,在宅医療の場においても重篤な副作用を伴うことなく,効果的にメサドンを増量可能だった.
  • 工藤 尚子, 前田 隆司, 鈴木 梢, 鄭 陽, 田中 桂子
    2014 年9 巻4 号 p. 523-527
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    【緒言】オクトレオチドは手術適応のない消化管閉塞での症状緩和に広く使用されている.そのほかに,上部消化管血流の減少などの作用から,食道静脈瘤や消化性潰瘍,消化管腫瘍の出血軽減効果が報告されている.われわれは,緩和ケア病棟で臨床的に消化管出血と診断された終末期がん患者に対し,オクトレオチド(300μg/日)が出血による症状を緩和した可能性がある4症例を経験した.【症例】症例1:75歳女性,胃がん,黒色便に対しオクトレオチドを使用した.投与中止後,吐血と黒色便の悪化あり,投与再開後症状は改善した.症例2:87歳女性,胃がん,胃部不快感と胃管の血性排液による視覚的な面からの精神的苦痛あり,オクトレオチド開始後,症状は改善した.症例3,4:76歳胃がん,62歳胆管がんの男性,大量吐血にオクトレオチドを開始後,吐血はなかった.【結論】終末期がん患者の消化管出血において,オクトレオチドの投与は症状を緩和する可能性がある.
  • 嶋田 和貴, 合屋 将, 津森 鉄平, 西條 美香, 樋上 泰造, 谷 恵利子, 武岡 佐和, 倉田 香菜子, 田中 彩子, 濱口 眞成, ...
    2014 年9 巻4 号 p. 528-532
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/04
    ジャーナル フリー
    【緒言】終末期がん患者における低Na血症はしばしば認められ,意識障害を引き起こし予後不良因子の1つとされる.今回われわれは,髄膜播種を契機に下垂体前葉機能の障害に伴う低ナトリウム(以下,Na)血症を発症し,可逆性意識障害を呈した1例を経験したので報告する.【症例】77歳,女性.当院で肺がん術後再発に対して化学療法を導入されたが,副作用のため積極的治療は中止となった.転医後,急激な意識障害のため当院へ再入院した.精査の結果,髄膜播種に伴う下垂体機能の障害から低Na血症をきたしたと考えた.NaCl補充やホルモン補充による低Na血症の改善とともに意識障害も回復した.【考察】終末期がん患者においても,可逆性原因による意識障害の場合は,積極的な治療により有意義な時間を過ごすことができる.【結論】担がん患者において高度な低Na血症を認めた場合,脳転移や髄膜播種に伴う下垂体前葉機能低下の障害も考慮する必要がある.
  • 西村 暢子, 柿原 直樹, 淺野 耕太, 神田 英一郎, 河端 秀明, 能勢 真梨子, 西谷 葉子, 三上 正, 井川 理
    2014 年9 巻4 号 p. 533-537
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/04
    ジャーナル フリー
    症例は38歳,女性.進行胃がん術後8カ月目にがん性イレウス発症し入院となった.悪心・嘔吐に対しドンペリドン坐剤・メトクロプラミド注射液・ハロペリドール注射液が開始されたが,アカシジアを合併し投与中止となった.そこで,六君子湯氷を作成し提供した.使用開始後より徐々に嘔吐の回数が減少し,自宅へ外出することが可能となった.六君子湯氷使用前は,空腹感や食欲があるにもかかわらず経口摂取不能な状況であることへの悲嘆が強い状態であった.六君子湯氷の服用は,制吐作用と経口摂取できる喜びが得られるため,身体的のみならず心理的な効果も得られる可能性が考えられた.ただ,外出から数日後に意識障害をきたしたので,退院することは叶わなかった.わずか数時間の外出が自宅で過ごす最期の機会となったが「しんどかった.でも家はよかった」という言葉を残して,彼女は外出後約1カ月で永眠された.
  • 平田 敦子, 飛澤 彰
    2014 年9 巻4 号 p. 538-541
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/05
    ジャーナル フリー
    【緒言】AIDS発症者は緩和ケア病棟入院の対象者であるが,実際には受け入れていない施設が多い.また,AIDS発症者の小腸がん合併はまれである.今回,小腸がん合併AIDS発症者を緩和ケア病棟(ホスピス)で受け入れ,緩和ケアを提供した症例を経験したので報告する.【症例】64歳,男性.AIDSの診断で抗ウイルス剤にて治療中であったが,小腸がんを合併し,緩和ケア目的に当院へ紹介入院となった.疼痛の増強に対し,フェンタニル貼付剤からフェンタニル貼付剤とモルヒネ持続皮下注射の併用に変更し,改善が得られた.最期は本人の希望により,間欠的鎮静を経て,フェノバルビタールによる持続的鎮静を導入した.【考察】HIV/AIDS患者の高齢化に伴い,緩和ケアを必要とする例も増加することが考えられる.施設間での緊密な情報提供と自施設内での検討を事前に行っておくことにより,緩和ケア病棟で受け入れ可能な症例の増加が期待できる.
  • 北條 秀博, 松本 禎久, 久能木 裕明, 阿部 恵子, 木下 寛也
    2014 年9 巻4 号 p. 542-545
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/19
    ジャーナル フリー
    【はじめに】転移性膀胱腫瘍による膀胱出血に対し,1%ミョウバン水持続灌流療法が奏功した中等度の腎機能障害例を報告する.【症例】64歳,女性.腎盂がんに対する右腎尿管摘出後に多発リンパ節転移,腰椎転移を認めていた.腰痛緩和目的の入院中に残尿感や排尿困難を認めた.膀胱内に多量の凝血塊を認め,用手的膀胱洗浄後に生理食塩水の持続灌流療法を施行したが改善せず,1%ミョウバン水による持続灌流療法を開始した.肉眼的血尿を認めなかったため,灌流は7日間継続し中止した.灌流開始後9日目の採血では,血清アルミニウム値の上昇はなく,その後腰痛も軽減し,退院となった.退院3カ月後に自宅で死亡したが,その間に肉眼的血尿や尿閉はみられなかった.【考察】腎機能障害例ではミョウバン水持続灌流療法によりアルミニウム脳症などの重篤な副作用も報告されているが,灌流量の減量により安全で有効な治療法である可能性が示唆された.
総説
  • 国分 秀也, 冨安 志郎, 丹田 滋, 上園 保仁, 加賀谷 肇, 鈴木 勉, 的場 元弘
    2014 年9 巻4 号 p. 401-411
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/08
    ジャーナル フリー
    2013年3月に, 本邦でもメサドン内服錠の臨床使用が開始された. メサドンは, モルヒネ等の他のオピオイドと異なる薬理作用をもち, 呼吸抑制およびQT延長といった重篤な副作用を発現することがある. その原因の1つとして, 体内薬物動態が非常に複雑であることが挙げられる. メサドンは大半が肝臓で代謝されるが, その代謝酵素はCYP3A4, CYP2B6およびCYP2D6など, 多岐にわたる. また, 自己代謝誘導があること, アルカリ尿で排泄が遅延すること, 半減期が非常に長く定常状態に到達するまでに長時間要すること等の問題がある. これらの複雑なメサドンの薬物動態を十分に理解して使用されなければ, 血中メサドン濃度が一定に保たれず, 一過性に上昇することによる重篤な副作用が起きる可能性がある. 本論文では, 臨床医師あるいは薬剤師がメサドンを安全に臨床使用するために必要な薬物動態についてまとめた.
活動報告
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