主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:周産期の Pharmacology
回次: 14
開催地: 東京都
開催日: 1996/01/20 - 1996/01/21
p. 141-148
硫酸マグネシウム(Mg)は早産や妊娠中毒症に対して長年にわたり使用されてきた。当初,Mgの胎児・新生児に及ばす影響は少ないと考えられていた1, 2)。しかしカルシウムに拮抗する作用を有することから,Mgの薬理作用は生体内で多岐にわたると考えられる。周産期領域でも胎児・新生児に及ぼす影響を再評価する動きがみられるようになった。なかでも低酸素血症や虚血は体内でのカルシウム代謝にいろいろな影響を及ぼすことから,これらのストレスとMgの関係が注目されてきた。1995年,Nelsonら3)は妊娠中のMg投与により,1,500g未満の児の脳性麻痺が減少すると報告した。成獣を用いた動物実験ではMgと中枢神経のNMDA(N-methyl-D-asparate)受容体との密接な関係が示されており,Mgが神経細胞障害を抑制する可能性も示唆されている4)。したがって,低酸素性虚血性障害に及ぼすMgの影響を検討することの意義は大きい。
そこで,Mgと胎児の低酸素血症との関連性に焦点をあて,動物実験を用いた基礎研究と臨床検討とを行った。