主催: 周産期学シンポジウム抄録集
会議名: 周産期学シンポジウム:21 世紀の周産期医療システム:問題点と展望
回次: 21
開催地: 東京都
開催日: 2003/01/17 - 2003/01/18
p. 29-39
緒言
わが国の周産期医療成績は世界でも際立った好成績をあげている。これは主に新生児医療成績であり,妊産婦死亡に関してはいまだ大きな問題を抱えている。新生児医療の向上は未熟児,ハイリスク新生児の病態が明らかとなり,新しい管理方法が普及してきただけではなく,従来から確立されてきた新生児搬送の地域化によるところが大きい。しかし,この新生児医療の地域化もわが国のNICUを作り上げてきた第一世代,第二世代医師達のボランティアベースの献身的努力に依存していたことが現状である。さらに,厚生労働省の展開する総合母子医療センターを中心とした周産期医療システムの展開は10数ヵ所で稼動しているものの,当初の人口100万人に1ヵ所という構想からは程遠い。これは,必要な産科,新生児科の医師数基準が厳しいこと,都市型では対応できない地域型に基準がそぐわないこと,すでに実績をあげており総合母子医療センターにふさわしい施設が国立であるためだけで認定されないなどの問題が考えられる。
わが国の病院群には,大学病院,都道府県市立病院,赤十字病院などのほかに国立病院・国立療養所がある。今回,この国立病院・国立療養所で周産期医療に携わる施設に対して周産期搬送についての全国調査を行ったので,その成績を踏まえわが国の周産期医療体制について言及する。