抄録
ラン藻Synechococcus sp. PCC 7942のメタロチオネインSmtAは、Zn2+などの重金属を結合し、細胞内の重金属濃度を調節している。NMRによる構造解析から、SmtAはN末端側の領域(Met1~Cys47)に2個、C末端側の領域(Gly43~Gly56)に1個のZn2+を結合することが推測されている。また、N末端領域あるいはC末端領域単独でもZn2+の結合能を保持していた。本研究では、SmtAにN末端領域を連続的に接続したペプチド、およびC末端領域のみを連続させたペプチドを作製し、Zn2+結合数の増加を試みた。
smtA 遺伝子にN末端領域のDNA断片を複数個接続したコンストラクト、およびC末端領域のDNA断片を複数個接続したコンストラクトを作製した。これをGSTとの融合タンパク質として大腸菌で発現させて精製した。ICP発光分析によりZn2+結合数を調べた結果、野生型SmtAのZn2+結合数は2.9であり、N末端領域を1つずつ増やしていくにしたがってZn2+結合数が2ずつ増加していった。N末領域を10個つなげたものは約23個のZn2+が結合した。C末端領域も同様、この領域1つに対してZn2+結合数が1つずつ増加し、Zn2+を1個結合するのに必要とされるアミノ酸の数が野生型SmtAよりも少ない、効率のよい人工ペプチドが作製できた。