日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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コムギのプラス温度域およびマイナス温度域の低温馴化過程における適合溶質細胞内局在性の変化
*鎌田 崇上村 松生
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p. 798

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抄録
温帯性植物は、低温馴化過程において細胞内に適合溶質を蓄積し、耐凍性を獲得・向上させる。また越冬性の穀物には、2つの低温馴化ステージ(1st-phase:プラス温度域、および2nd-phase:マイナス温度域)が存在する。本研究では、2つの低温馴化ステージにおける耐凍性の変化と適合溶質の細胞内局在との関連を検討することを目的として実験を行った。材料として冬コムギ(Norstar)、および春コムギ(Haruyutaka)を用い、人工環境下でプラスおよびマイナス温度域での低温馴化処理を行い、耐凍性および適合溶質(糖・プロリン・ベタイン)の細胞内局在性を測定した。適合溶質の細胞内局在性は、葉組織をNonaqueous Fractionation法(Stitt et al., 1989)を用いて分画し、3つの細胞内画分(細胞質・液胞・葉緑体)について決定した。また、葉切片の透過型電子顕微鏡観察により細胞内画分の体積推定を行い、適合溶質の細胞内画分における濃度を推定した。その結果、1)適合溶質濃度は、2つの低温馴化期間を通じて、細胞質において最も高いこと、2) 2つの低温馴化処理によって、各細胞内画分の適合溶質濃度が急激に変動すること、3)しかし、その変動パターンは各細胞内画分、および品種間で異なること、が明らかになった。以上の結果を基に、耐凍性と適合溶質の細胞内局在性の変動、およびコムギの品種間差異について考察する。(本研究の一部は生研機構の援助により行われた。)
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© 2004 日本植物生理学会
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