抄録
マメ科植物と根粒菌との感染初期応答反応は主に根毛部位で引き起こされ、根毛の先端部位の巻き込み(Hac)が根粒菌の細胞内への侵入に重要な働きをしている。初期感染応答不全を示すNod-変異体はHacが見られないことから、根毛の伸長方向の不全に関わっていると考えられる。そこで本研究では4つのミヤコグサNod-変異体であるsym70,sym71,sym72,sym73を用いて根粒菌シグナルであるNod factor(NF)を与えた際の根毛のレスポンスを解析した。sym70は添加後24時間経過した場合はほとんど変形がなかった。これに対してsym71,sym72,sym73では根毛の著しい変形が見られたが、それぞれ特徴的な分枝(Had)が野生型より多く見られた。またNF添加後2時間の根毛を調べたところ、すべての変異体がHasを示し、根毛が再伸長していた。そこでアクチン骨格の動態変化を観察したところ、NF添加前のsym72、sym73の束化が不全であった。またNF添加後、sym70のアクチンの再配向が他の変異体に比べ若干早く、2時間後のsym72はHasを起こしたまま再配向が見られなかった。これらのことからこれら4つの変異体の持つ因子が複合的に関わりあって、NFシグナル存在下の根毛の伸長方向を絶えずコントロールしているのではないかと考えられた。