抄録
植物は病原体から身を守るために独自の生体防御反応を示す。我々は,イネ耐病性反応において低分子GタンパクOsRac1が病原菌に対する抵抗性反応を誘導する分子スイッチとして機能していることを明らかにしている。本研究ではOsRac1と直接相互作用する因子を同定するため,OsRac1 Affinity Chromatographyを行った。その結果, 7つのWD40リピートをもつReceptor for activated C-kinase 1 (RACK1)と相同性のあるRWD(Rice protein containing the WD-40 repeat)/OsRACK1を同定した。そこで,RWDの耐病性における機能解析を行った。RNAi発現抑制体は,カルスからの再生植物が得られず再分化直後の致死が観察された。一方,RWD過剰発現体は植物体として正常に生育し,病原性いもち病菌に対して強い抵抗性が観察された。加えて抵抗性反応のマーカーであるPBZ1は高発現していることがわかった。さらに,スフィンゴ脂質エリシター処理により,RWD過剰発現および発現抑制どちらの培養細胞においても活性酸素種の生成が全く観察されなかった。また,ヘテロ三量体Gタンパクαサブユニット変異体では,RWDタンパク質量が減少していることがわかった。以上のことから,RWD遺伝子は,Gタンパク質を介した抵抗性反応を誘導することが示唆された。現在,OsRac1とRWDとのin vivoでの相互作用をFRET解析により調べ,OsRac1との関わりおよび,RWDの耐病性における詳細な機能を解析中である。