抄録
PSKは植物培養液中に見出された細胞増殖を促進する5アミノ酸の分泌型ペプチドであり,細胞膜上に存在する受容体キナーゼであるPSKR1に非常に高い親和性を示して結合する.PSKR1は細胞外領域に21個のロイシンリッチリピート(LRR)とその繰り返し配列に当てはまらない孤立した領域であるアイランドドメインを有しているが,リガンド結合部位の直接的な同定は行われていない.我々は今回,光反応性PSK誘導体を用いたフォトアフィニティーラベルによりPSKR1のリガンド結合部位の生化学的解析を行った.光反応性PSK誘導体を用いたリガンド結合領域のマッピングと併せて,ラベル効率を向上させるために独自に確立した手法であるOn-column photoaffinity labelingを用いたラベル反応を行い,酵素消化したペプチド断片より免疫沈降によってラベル導入受容体断片を精製し,MALDI-TOF MSによる解析を行った.その結果,PSKR1の細胞外領域中のアイランドドメインに由来する15アミノ酸残基のペプチドをラベル導入部位として同定した.同定したアミノ酸領域を欠損させたPSKR1はPSKの結合能を完全に失ったため,PSKR1のリガンド結合部位はアイランドドメインの前半15アミノ酸残基であると結論づけた.