抄録
脂質は比較的疎水性の高い物質の総称であり,構造的には多様な化合物群から構成される.それらには,リン脂質のような細胞膜を構成するような脂質も含まれれば,テルペノイドの誘導体のような二次代謝産物も含まれる.本研究では,植物が生合成する脂質のプロファイルを明らかにすることを目的とし,液体クロマトグラフィー質量分析装置を用いた分析系の構築を試みた.
植物材料としてシロイヌナズナを用い,その脂質を含む抽出物を親水性相互作用クロマトグラフィーにより分離した.溶出液はそのままion trap-TOF型質量分析装置に導入し,化合物の検出を行った.その結果,リン脂質やガラクト脂質のような細胞膜を構成する代表的な脂質などが検出された.これらの脂質には脂肪酸の鎖長と不飽和度が異なる多くの類縁体が存在するが,溶出時間と精密質量により個々の類縁体を区別した.分析系の構築と同時に,組織別の脂質プロファイルの解析やシロイヌナズナの変異体が蓄積する脂質について解析を行っている.それらのうちのいくつかの事例について報告したい.