抄録
砂漠環境に自生する野生スイカは、乾燥強光に伴い生体内の窒素化合物を大規模に分解・再利用し、ヒドロキシルラジカル消去能に優れたシトルリンを蓄積する。これまでに、シトルリン代謝を担う全11種の酵素のうち4酵素が、乾燥に伴い活性変動し、シトルリン蓄積の鍵となっていることを明らかにしている。本研究では、乾燥強光に伴い活性を増加させる鍵酵素の一つであるAcetylglutamate kinase (AGK)に注目し、その活性制御機構を解析した。
まずアルギニンによるAGKのフィードバック阻害を解析したところ、乾燥後の野生スイカ葉粗抽出液におけるAGK活性は、乾燥前の粗抽出液における活性と比較し、フィードバック阻害が緩和されることを見出した。このようなAGKの応答から、炭素・窒素比を制御するセンサータンパク質PII proteinの関与が示唆された。そこで野生スイカPII protein量を抗体反応により解析したところ、シトルリンの蓄積と相関して発現量が増加していた。次にストレス未処理の野生スイカのタンパク質粗抽出液に組換えPII proteinを加えAGK活性を測定したところ、アルギニンによるAGKのフィードバック阻害が緩和されることを見出した。これらの結果は、野生スイカにおいてPII proteinがシトルリン蓄積を制御していることを示唆している。