抄録
葉緑体分裂の最終段階でダイナミン関連タンパク質(DRP)が関与することが、紅藻やシロイヌナズナを用いた研究より示されている。シロイヌナズナゲノム中にはARC5(DRP5B)とよばれる1つの葉緑体型DRPが存在しており、その変異ラインでは分裂途中と考えられるダンベル型の葉緑体が多数観察される。葉緑体が観察しやすく、遺伝子破壊が可能なヒメツリガネゴケよりDRP5B相同遺伝子の同定を行い、PpDRP5B-1、-2、-3の3種の全長cDNA配列を決定した。PpDRP5B-1、-2、-3の予測アミノ酸配列はARC5と54.7%、54,9%、55.0%の、PpDRP5B内では、54.7%から86.2%の同一性を示した。3種の細胞内局在部位予測プログラムで、これらのタンパク質は葉緑体に移行することが予測された。PpDRP5B-1、-2各遺伝子の単一遺伝子破壊ラインを作成したところ、1細胞当たりの葉緑体数は平均46.4±5.5個、46.2±5.3個であり、野生型(49.3±5.5個)と有意差は見られなかった。次に、PpDRP5B-1、-2二重遺伝子破壊ラインを作成したところ、1細胞当たりの葉緑体数が平均30.3±6.4個に減少し、葉緑体の肥大化が観察された。電子顕微鏡観察では、肥大化した葉緑体の内部構造に変化は観察されなかった。現在、PpDRP5B-3を含めた三重突然変異ラインの作成を進めている。