抄録
背景: イントロン長の最頻値以短は急激に頻度が下がることから、スプライシングを担う巨大分子団スプライセオソームが物理的に結合するのに最も効率が良いイントロン長が分布の最頻値を決定し、それより短いイントロンはスプライセオソームが結合できないため、存在できないと考えられている。ところが我々はイントロン長頻度分布パターンの上では、外れ値にあたる短いイントロン(micro-intron)も存在していると考え、本発表はそのようなmicro-intronの進化的保存性について示すことで、その存在証明と起源について明らかにすることを目的とする。方法: ヒト遺伝子・転写物データベースH-invDBより注釈付されたイントロンのうち最頻値以短のものについて、ゲノム配列および転写物配列それぞれに対して、相同性検索を行った。その結果、両者とも同じ近縁種に高い配列相同性のイントロンを選び出した。さらに、それらの相同イントロンについて、H-invDBのサブ・データベースEvolaのオロソログ・アノテーション情報を目視、および近縁種の相同イントロン配列をEnsemblより取得し、比較した。結果と考察: ヒト・イントロンではその頻度分布から通常のスプライシング機構の担うイントロン長が65塩基以長であることが示唆された。65塩基以短では23のイントロンが近縁種に保存されていた。これら23イントロンは、両端のエクソンの相同性はさらに古い段階から保存されている傾向が観察された。以上より、ヒトに観察されたmicro-intronは派生的にスプライシングパターンがヒトの系統近くで変化して、発生したものであることが明らかにされた。また、真核生物中に散在する、極端に短いイントロンばかりから成る生物のイントロンとヒトのmicro-intronとは進化的には無関係であると考えられる。