日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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マングローブ樹種ヒルギダマシ(Avicennia marina)は器官特異的にナトリウムをろ過する
*楠城 時彦吉永 秀一郎馬場 繁幸
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p. 416

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抄録
本研究では,マングローブ樹種の耐塩性機構に注目して生理学的解析をおこなった。西表産マングローブ数樹種の器官別塩イオン濃度を測定した結果,根から吸収されたNa+は地上部栄養器官まで到達していた。しかし,すべての樹種において,種子のNa+濃度は他器官に比べて有意に低かったことから,種子と栄養器官の間でNa+がろ過されると考えられた。特に,ヒルギダマシ(Avicennia marina)の種子-栄養器官間の塩濃度勾配は顕著に大きかった。さらに,ヒルギダマシの種子でのみNa+/K+比が1より小さかったことからNa+を選択的にろ過する機能が推定された。塩イオンを選択的にろ過するためには,根圏由来の水が維管束系の連続が途切れた柔組織を通過する必要があると考え,ヒルギダマシの解剖学的解析をおこなった。その結果,維管束系は花茎から種皮および種子内部の胎座様組織まで連続しており,胎座と種子胚軸下端部は,維管束系ではなく柔組織同士で密着していた。細胞内のNa+を特異的に認識する標識試薬をもちいて,ヒルギダマシ種子生切片のNa+分布を蛍光観察した。その結果,花茎からの維管束系が連続する種皮や胎座にNa+が局在し,胚軸および子葉にはNa+が見られなかった。本研究によりわれわれは,ヒルギダマシ種子の胎座部分が,Na+を選択的かつ効率的にろ過する機能をもつことを明らかにした。
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© 2007 日本植物生理学会
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