抄録
SCAMP(Secretory Carrier Membrane Protein)は、脊椎動物の神経細胞で見出され、 4回膜貫通領域と細胞内輸送に関わる様々な配列を持つ膜タンパク質である。我々は、植物細胞におけるSCAMPの局在およびその機能に興味を持ち、タバコ培養細胞BY-2株を用いて、詳細に解析を行った。共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)解析の結果、SCAMPは細胞膜(PM)と細胞内に多数のドット状の構造体として存在した。膜系オルガネラマーカータンパク質、蛍光色素、輸送阻害剤を用いてSCAMPの局在を検討した結果、そのドット状の構造体は、トランスゴルジネットワーク(TGN)以降のオルガネラであるが、多胞体/液胞前区画(MVB/PVC)ではないことがわかった。さらに、高圧凍結技法による免疫電顕を行った結果、SCAMPはTGNおよびPM、そして、小胞のクラスター構造体に局在を示した。電顕、4D-CLSM、全反射顕微鏡解析の結果、このクラスターは、TGNとは異なりゴルジ体と独立して存在することから、我々はSVC (SCAMP-containing vesicle cluster)と命名した。さらに、SVCがPMおよび細胞板と融合する像を得た。以上の結果から、SCAMPはTGN, SVC, PMに局在し、SVCはゴルジ以降の分泌に関与する新規オルガネラである。