抄録
酵母や動物には存在しない植物特有のカルシウム依存性プロテインキナーゼ(CDPK)は、高等植物において多重遺伝子族を形成している。カルシウムイオンは情報伝達における普遍的かつ二次的な情報伝達因子であるため、様々な情報伝達経路にCDPKが関与すると考えられる。しかしながら、これまでに高等植物のCDPKの機能が明らかにされた研究は数例しかなく、これら遺伝子族内での機能分担/重複に関する知見は得られていない。我々はFull-length cDNA Over-eXpressor gene (FOX) hunting systemの手法を利用して塩や低温などの環境ストレス耐性や炭素代謝および窒素代謝に関わるイネCDPK遺伝子の効率的な同定およびそれらの機能解明を試みている。網羅的に作出したイネCDPK遺伝子の過剰発現イネ系統から高塩ストレスや低温ストレスに耐性を示すイネを探索した結果、これまでに耐塩性が強まった3系統のCDPK過剰発現イネを同定している。現在、これらの系統について詳細な解析を行っている。