日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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低温馴化で細胞膜に蓄積する膜タンパク質の機能解析
*山崎 誠和河村 幸男南 杏鶴上村 松生
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p. 476

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抄録
植物が氷点下の環境に曝され細胞外に氷晶が形成すると、細胞内外に水の化学ポテンシャル差が生じ、植物細胞に致命的な傷害をもたらす脱水ストレスが細胞膜に加わると考えられる。温帯以北に生育する植物の多くは、凍らない程度の低温で低温馴化し、凍結耐性を増大させる。これは、低温馴化で細胞膜中の不飽和リン脂質の構成比が増加し、脱水ストレスに対する耐性が増大するからだと推測されている。低温馴化では、細胞膜タンパク質の構成も変化するが、それらの凍結耐性への寄与は不明である。我々は、シロイヌナズナを用い、低温馴化で量的に変動する細胞膜タンパク質をプロテオーム的手法で解析した。その結果、低温馴化で増加する膜タンパク質の一つとして、動物細胞のシナプトタグミンと相同性の高い、シナプトタグミン様タンパク質AtSytAを同定した。動物細胞のシナプトタグミンは、機械的ストレスによって傷害を受けた細胞膜の修復に関わるとされる。細胞膜は、細胞外の氷晶から脱水ストレスだけでなく機械的ストレスも受けることから、AtSytAが機械的ストレス耐性に関与する可能性が示唆される。しかし、これまで細胞膜に加わる機械的ストレスに対する耐性と凍結耐性の関係について議論した研究はほとんど無い。本発表では、凍結耐性におけるシロイヌナズナAtSytAの機能を知るために行った逆遺伝学的な解析の結果を主に報告する予定である。
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© 2007 日本植物生理学会
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