抄録
我々は低温・乾燥が著しい寒冷圏では光ストレスによって北方林樹木のライフサイクルが制御されるという仮説のもとにその制御機構の解明を行っている。本研究では、北方林樹木の花成の制御機構を明らかにするため、北方林主要構成樹種カラマツ属グイマツ(Larix gmelinii var. japonica)を用いて花芽形成遺伝子の相同遺伝子を単離し、その機能の解析を行った。北海道立林業試験場(美唄)に生育するグイマツからシロイヌナズナの花成決定遺伝子LEAFYの相同遺伝子LGY1とLGY2を単離した。LGY1とLGY2は開花した雄花や雌花よりも、翌年に花となる芽で高い発現が認められた。芽において、LGY1の発現は花芽形成が開始すると考えられる5月から増加し9月に減少したのに対して、LGY2の発現は恒常的に認められた。シロイヌナズナ花器官形成遺伝子AGAMOUSのグイマツにおける相同遺伝子は、芽において7月から発現が認められたことから、LGY1は花器官形成が開始される以前に発現が始まると考えられ、グイマツの花芽形成の決定に関与すると考えられた。本発表ではLGY1およびLGY2をcauliflower mosaic virusの35Sプロモーターを用いて過剰発現させたシロイヌナズナ形質転換植物の解析結果と合わせて、LGY1およびLGY2の機能について報告する。