抄録
ジャスモン酸メチル(MeJA)は、アブシジン酸(ABA)と同様に気孔閉口を誘導するが、このMeJAの気孔閉口誘導機構はまだ明らかではない。MeJA非感受性変異体coi1を用いた実験により、我々はシロイヌナズナ孔辺細胞におけるMeJAシグナリングの解明を試みた。coi1変異体では、ABAは気孔閉口を誘導したが、MeJAは誘導しなかった。MeJAは野生株の孔辺細胞において活性酸素種(ROS)と一酸化窒素(NO)の産生を誘導した。さらに我々は、MeJAは野生株の孔辺細胞プロトプラストにおいてSタイプアニオンチャネルとICaチャネルを活性化することを見出した。これらMeJAが誘導するセカンドメッセンジャーの産生やイオンチャネルの活性化はcoi1変異体では観察されなかった。ABA非感受性変異体abi2-1では、ABAと同様に、MeJAは気孔閉口を誘導できないが、ROSとNOの産生は誘導した。我々の結果は、MeJA誘導気孔閉口のシグナル伝達を明らかにし、シロイヌナズナ孔辺細胞内に存在するABAとMeJAの間に広がるシグナルネットワークの1つのモデルを提唱する。