日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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硝酸還元とミトコンドリア呼吸鎖の相互作用
*蜂谷 卓士寺島 一郎野口 航
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p. 659

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抄録
植物の呼吸鎖には、動物と共通のシトクロム経路とは別に、alternative oxidase (AOX)が存在する。AOXは、還元型ユビキノンから電子を酸素に移し、プロトン輸送を伴わない。従ってAOXはエネルギー的に無駄であるが、過剰な還元力を散逸させ、活性酸素生成を抑制していると考えられている (Maxwell et al., 1999)。窒素同化は多くの細胞内の還元力を消費することで知られ、特に硝酸還元の寄与は大きい。こうしてAOXと硝酸還元はともに還元力の消費系と見なすことができる。植物を硝酸を与えずに(アンモニア下で)生育すると、AOX活性や遺伝子発現が誘導されることが知られている (Escobar et al., 2006)。このことは、AOXと硝酸還元が、還元力を巡って相互作用する可能性を提起する。本研究では、実際に硝酸還元の活性の変化がAOXの活性に影響するのかを検証した。シロイヌナズナの葉のNR活性をタングステンで阻害し、シアン耐性呼吸速度としてAOXの最大活性を測定した。その結果、硝酸還元とシアン耐性呼吸の両経路の電子フラックスは同程度であり、阻害剤処理によるNR活性の減少量とシアン耐性呼吸の増加量とは強い正の相関があった。この結果は、NR活性の減少によって余った還元力が、AOXにより消費されることを示唆した。今回の発表では、AOX活性のさらなる定量的な解析や、還元力輸送系の解析に関する結果を報告する。
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© 2007 日本植物生理学会
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