日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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植物において窒素同化遺伝子群を正に制御するMYB型転写因子の同定とそれを介した転写制御機構の解析
*今村 壮輔兼崎 友寺下 優西田 淳子黒岩 常祥田中 寛
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p. 661

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抄録
Cyanidioschyzon merolae(シゾン)は単細胞紅藻であり、核・ミトコンドリア・葉緑体全ゲノム塩基配列が既に決定され、その遺伝子重複性が低い事や、細胞構造が単純であること等から、植物の優れたモデル生物と考えられている。窒素の同化は植物の生長を決定する重要なプロセスの一つであるが、その制御に関わる分子機構については不明な点が多い。本研究ではシゾンを用い、窒素同化遺伝子群の発現を制御する転写因子の同定と機能解析を行ったので報告する。
DNAマイクロアレイ解析の結果、窒素枯渇条件2時間後においてR2R3タイプのMYB型転写因子遺伝子 (MYB-1) の発現が誘導される事が明らかになった。また、MYB-1の蛋白質レベルも窒素枯渇条件下で顕著な誘導が観察され、それらの核への局在が観察された。クロマチン免疫沈降・ゲルシフト解析の結果、MYB-1が窒素枯渇下特異的にNRT, NIR, そしてGS プロモーターに結合している事が明らかとなり、MYB-1が窒素枯渇下において窒素同化遺伝子群の発現を正に制御している事が明らかになった。また、窒素枯渇条件4時間後においては1RタイプのMYB型転写因子遺伝子(MYB-2)の発現誘導が観察され、窒素同化遺伝子群の発現におけるMYB型転写因子の時期特異的な貢献が推測された。これらの結果を踏まえ、植物の窒素代謝におけるMYB型転写因子の役割について考察したい。
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© 2007 日本植物生理学会
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