抄録
我々は、リンゴの花芽形成機構を解明するために、シロイヌナズナのLEAFY遺伝子のリンゴでのオルトログであるAFL1、AFL2遺伝子の発現解析を行った。AFL1、AFL2の発現はRT-PCRによってのみ確認され、AFL1が花芽茎頂でのみ検出されるのに対し、AFL2は、花芽茎頂及び栄養生長の茎頂でも検出された。そこで、発現組織を詳しく調べるためにそれぞれの遺伝子の3'ノンコーディング部位を特異的なプローブとして、リンゴの花芽形成時期の発現組織をin situ hybridization(ISH)法で解析した。2005年夏から2006年夏にかけて、果樹研究所リンゴ研究拠点(盛岡)の圃場のリンゴ樹から採取した花芽茎頂をFAA固定し、10 μm厚の切片を作製した。その切片でISHを行ったところ、AFL1、AFL2ともに花芽茎頂の外衣と葉原基が顕著に染色された。AFL1、AFL2それぞれの発現組織にはっきりとした違いは見いだせなかった。また発達した花序でもそれぞれの遺伝子は同様の発現様式を示した。リンゴ品種によって花芽の成熟までの期間が異なるが、それぞれの遺伝子の発現は形態変化、時期に関わらず、異なる品種でも共通した組織で観察された。以上のことはリンゴのAFL1、AFL2がともにリンゴの花芽形成に関与していることを示唆した。