抄録
本研究グループでは、TFIIA型ZnフィンガーファミリーやERFファミリーに属する一部の転写因子が強い転写抑制活性を持ち、これらの転写因子による下流の遺伝子の発現抑制が植物の生理機能に重要であることを明らかにした。これらの転写抑制因子のC末にはEARモチーフと呼ばれる配列が保存されており、この保存領域が転写抑制ドメインとして機能することが分かった。驚くべきことに、このEARモチーフ中に含まれる“XLxLXL”という6残基からなる短い配列が強力な転写抑制能を持つことが示された。これまでにXLxLXLのように数残基のみで強力に機能する転写抑制ドメインが同定されたという報告は無い。またEARモチーフは植物にしか保存されていないため、植物が他の生物にはない独自の転写調節機構を発達させたものと思われる。しかし、本転写抑制ドメインが、なぜこのように強力な転写抑制能を発揮するのか、そのメカニズムは不明である。
EARモチーフは、6残基のみで強力な転写抑制機能を発揮するが、この6残基のみの短いペプチド鎖が、酵素活性等を有し直接転写抑制に作用している可能性は低い。したがって、転写を抑制するためには他の因子、例えばコリプレッサーが必要であるものと推測する。そこで本研究では、酵母two-hybridシステムを用いてこのEARモチーフと相互作用する因子を同定し、それらの因子がEARモチーフを介した転写抑制機構にどのように関わっているのかについて議論する。