日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

シロイヌナズナ AP2 型転写アクティベーター ASML1/WRI1 の標的遺伝子の探索
*前尾 健一郎綾女 敦子徳田 剛史塚越 啓央中村 研三
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 781

詳細
抄録
シロイヌナズナ ASML1 は、モデル糖誘導性プロモーターの活性化を指標にしたエンハンサータギング法で同定された AP2 型転写因子をコードする遺伝子で、種子の油脂蓄積量の低下した wrinkled1 変異株の原因遺伝子と同一である。ASML1/WRI1 の発現は糖処理で上昇し、その過剰発現は種々の糖誘導性遺伝子の発現を亢進することから、種子におけるショ糖炭素源の油脂への分配を正に制御すると推定された。今回、ASML1/WRI1 の油脂合成における役割を明らかにする目的で、過剰発現株を用いたマイクロアレイ解析を行った。その結果、ショ糖代謝酵素や葉緑体内での脂肪酸合成系などの遺伝子の発現が、野生型に比較して過剰発現株において増加しており、またこれら遺伝子の発現は遺伝子破壊株では低下していた。しかし、トリアシルグリセロールの合成に関わる TAG1 やオレオシン遺伝子の発現には顕著な変化は見られなかった。種々の遺伝子について、プロトプラストにおけるプロモーターと LUC レポーター遺伝子の一過性発現に及ぼす効果を調べたところ、ASML1/WRI1は脂肪酸合成系遺伝子のプロモーターを顕著にtrans-activationしたが、TAG1 やオレオシン遺伝子のプロモーターの活性化は低かった。これらの結果から、ASML1/WRI1 はショ糖の取込から葉緑体内での脂肪酸合成に至る過程の遺伝子の活性化に関わると推定される。
著者関連情報
© 2007 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top