抄録
高等植物のオルガネラでは、RNA編集によってRNA鎖上の特定のCがUに変換される。個々の編集部位はPPR (pentatricopeptide repeat)タンパク質によって特異的に認識されることが示唆されている。PPRタンパク質は、オルガネラでの様々なRNAプロセシングに関わっており、シロイヌナズナのゲノムには450ほどがコードされている。しかし、シロイヌナズナでは469のRNA編集部位がみいだされており、ひとつのPPRタンパク質が一つの編集部位だけを認識しているとは考えにくい。また葉緑体形質転換植物の解析からも、いくつかのRNA編集部位の反応に共通のトランス因子が関与している可能性が示唆されてきた。しかし、これまで単一のトランス因子が複数のRNA編集部位を認識することを示す直接の証拠は得られていなかった。そこで本研究では、タバコ葉緑体in vitro RNA編集系を用いたUVクロスリンク実験によって、そのような共通因子の探索を行った。その結果、タバコのndhF-1、ndhB-9、rpoB-3の3つの編集部位には分子量95kDaの同一因子(p95)が結合していることが明らかになった。このp95は、上流近傍のシス配列と標的C塩基の両方に結合していた。従って、p95は、psbE-1部位を認識するp56やpetB-1部位に結合するp70などと同様な性質をもった部位認識因子であると予想される。