抄録
シアノバクテリオクロムは、ファイトクロムに代表されるGAFドメインをコードする光受容タンパク質である。近年、フィトクロムとは異なる吸収波長を持つ開環テトラピロール結合GAFドメインがバクテリアで数多く見つかった。例えばSynechocystis sp. PCC6803のSyPixJ1(sll0041)は走光性の制御を行い、青/緑色光を吸収する。本研究の対象とするAnabaena sp. PCC7120のAnPixJ-GAF2は、緑色光を吸収するPg型 (543 nm)と、赤色光を吸収するPr型(649 nm)の二状態を取り、光反応により、可逆的なフォトクロミズムを示す。
本研究では、光シグナル変換過程と吸収波長制御の分子機構を明らかにするため、大腸菌に発現させ、精製を行ったAnPixJ-GAF2の時間分解吸収変化測定を行った。PgからPrへの光変換過程を、Nd:YAGレーザー(532 nm)励起で測定し、PrからPbへの変換をXeフラッシュランプ励起(>620 nm)で測定した。時間分解差スペクトルのグローバル解析から、Pg->Prへの変換では、室温でマイクロ秒からミリ秒で変化する成分が同定され、Pr->Pg変換では、ミリ秒で変化するスペクトル成分が一つ存在した。中間体の吸収波長に基づいて、構造変化モデルを議論する。