抄録
グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)はミトコンドリアに局在し、2-オキソグルタル酸とアンモニアからグルタミン酸を合成する。
ナタネのGDHはα,βサブユニットで構成される6量体で、7種のアイソザイムが存在する。健全葉ではGDH1~4の活性が発現し、傷害ストレスを受けるとGDH1~7まで活性が発現する。特にプロトプラスト単離時にGDH7の活性が強く発現する。
ジャスモン酸、サリチル酸を酸性条件下で吸水させたナタネ葉ではプロトプラストと同様にGDH7の活性が強く発現した。
Native-PAGE、ウェスタンブロッティング、RT-PCRの結果から、非ストレス状況下ではαサブユニットはS-S結合によって不活性化され、傷害処理ではGDH2 mRNAの転写は促進されたが、S-S結合の還元によって活性が発現した。プロトプラスト化では高発現したmRNAの翻訳の抑制が解除され、αサブユニット(GDH7)が大量に発現した。
プロトプラスト化によってNAD(P)Hが増加しNAD(P)+が減少したが、傷害処理では大きな変化は見られなかった。
傷害処理およびプロトプラスト化によって、アスコルビン酸、グルタチオンのレドックス比が低下した。
以上の結果から、GDHは活性酸素除去経路に必須な還元力を持つNAD(P)Hを供給することで細胞内の酸化ストレスを緩和し、細胞内pHの恒常性保持に関与する可能性が示唆された。