日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

コムギのフルクタン合成酵素遺伝子を導入したイネ形質転換体の幼苗耐冷性と蓄積糖の変化
*吉田 みどり川上 顕佐藤 裕
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 883

詳細
抄録
フルクタンは麦類などの寒地型イネ科植物において耐凍性に深く関与する蓄積多糖であるが、低温感受性のイネには蓄積しない。我々は、コムギのフルクタン合成酵素の遺伝子を導入した形質転換イネの穂ばらみ期耐冷性が顕著に向上することをすでに報告している(佐藤ら、育種学研究 2005)。 フルクタンを蓄積したイネでは幼苗の耐冷性も向上する。本研究では、フルクタン蓄積イネの耐冷性向上機構を解明するために、低温処理中のイネ幼苗組織の糖の変化を調べた。25℃で育てた1-SST(sucrose:sucrose 1-fructosyltransferase)遺伝子導入イネ形質転換体ではイヌリン型の3-5糖のフルクタンが蓄積し、6-SFT(sucrose:fructan 6-fructosyltransferase)遺伝子導入イネにはレバン型のフルクタンがより高重合度で蓄積した。フルクタン含量は1-SST導入系統のほうが6-SFT系統よりも3-4倍高く、5℃・11日処理後の生存率も6-SFT導入系統 を上回った。遺伝子発現が弱く、フルクタン蓄積が極めて低い系統の耐冷性は非形質転換体と差異がなかった。低温処理によって、イネ幼苗中のスクロース含量が急激に増加するが、フルクタン蓄積イネでは、スクロース含量は非形質転換体より低く、低温処理によるスクロースの急激な増加は緩和され、フルクタン量が増加した。
著者関連情報
© 2007 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top