抄録
低温馴化とは、一定の期間凍結しない程度の低温にさらされると凍結に対して耐性を持つようになる現象であり、低温誘導性遺伝子の発現が関与していると考えられている。本研究では、シロイヌナズナのアクティベーションタグラインを作成し、新規の低温馴化関与遺伝子の検索を試みた。作成した約33,000のタグラインは-14℃、3時間の凍結スクリーニングにより、耐凍性が向上したと考えられる43ラインに絞られた。その中でも、一定期間の低温にさらさなくても耐凍性が向上したタグライン18-16は、-15℃で3.7%のカルスが生存しており、野生型の0.27%に対して、13倍以上高い生存率を示した。サザンブロット解析により、ライン18-16にはT-DNAが一ヶ所挿入されていることが確認され、TAIL-PCRにより、挿入されたT-DNA近傍にはACT7/2, fibrillin-like protein (FIB) などをコードする遺伝子が存在していることが確認された。T-DNA近傍の遺伝子が活性化されることにより耐凍性が向上したと考えられるため、FIB遺伝子をクローニングし、過剰発現体を作成した。この過剰発現体の胚軸由来カルスにおいては耐凍性が向上していることが分かった。