抄録
シロイヌナズナの低親和型硫酸イオントランスポーターSULTR2;1は、維管束系で発現することから、植物体内の硫酸イオンの分配に働くと考えられている。一方、SULTR2;1の根における遺伝子発現は環境中の硫酸イオン濃度の減少(-S)に応答して増加し、地上部では逆に減少する。私たちは植物の-S への適応機構に果たすSULTR2;1の役割を明らかにすることを目的として、SULTR2;1の硫黄栄養応答領域の同定を試み、根におけるSULTR2;1の-S応答には3’非転写領域が必須であることを見出した。また、SULTR2;1-5’領域:: GFP:: SULTR2;1-3’領域を持つ植物では、維管束系のみならず根の皮層でも-Sに応答した顕著なGFPの蓄積が認められた。さらに、SULTR2;1の3’領域にT-DNAが挿入されたシロイヌナズナ(tKO)では、SULTR2;1の地上部における-S応答は変わらず、根における-S応答のみが失われていた。野生株、SULTR2;1欠損変異株(KO)、tKOを用いて、+S、-S条件における硫酸イオンの吸収と地上部への移行を比較したところ、野生株と比べて、KOではどちらの条件においても吸収・移行が有意に減少するのに対し、tKOでは-S条件においてのみKO様の表現型を示すことが明らかとなった。これらの結果から、SULTR2;1は環境中からの硫酸イオンの吸収と根から地上部への硫酸イオンの移行の両方に働いており、-S条件下においては3’非転写領域を介した根における発現上昇により、その活性が上昇すると推定される。