日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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低温ストレス下でのAOXの機能
*渡辺 千尋寺島 一郎野口 航
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p. 0016

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抄録
植物のミトコンドリア呼吸鎖にはATP生産と共役しないalternative oxidase (AOX)を介するシアン耐性経路がある。この経路はエネルギー的には無駄であるが、ストレス下における活性酸素生成の抑制や炭素・窒素バランス(C/N比)の調節に働く可能性が指摘されている。
本研究では、低温ストレス下でのAOXの機能を明らかにすることを目的とした。シロイヌナズナ野生株とaox1a欠損形質転換株に4℃処理を施し、葉の性質を比較した。低温処理によって野生株の葉のシアン耐性呼吸速度が大きく増加したため、aox1a株では呼吸速度の増加の程度が低くなると予想したが、aox1a株ではむしろ野生株よりも高い呼吸速度を示した。aox1a株ではミトコンドリア膜間腔のNADHを酸化するNADH dehydrogenaseであるNDB2の発現が有意に上昇していた。また、酸化ダメージの指標であるMalondialdehyde量は、aox1a株で野生株より低い傾向であった。これらの結果だけではAOXが呼吸の低温馴化や活性酸素生成の抑制に働く可能性を否定できないが、そのようなAOXの機能は他のタンパク質に相補されうると考えられる。しかし、C/N比は野生株よりaox1a株で有意に高く、aox1a株ではデンプン蓄積量が多かった。AOXの機能として、炭水化物の蓄積を抑え、C/N比の調節に働く可能性が考えられる。
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© 2008 日本植物生理学会
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