抄録
イネのUVB感受性は、品種間で大きく異なる。これまでの研究より、このUVB感受性差異は、UVB誘導シクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)を修復するCPD光回復酵素のアミノ酸配列の変異に由来する活性の変化に起因していることが明らかとなった。このことから、UVB抵抗性イネ品種を作出する手段として、CPD光回復酵素活性を高めることが有効であると考えられる。そこで本研究では、高いCPD光回復酵素活性を示す遺伝子資源を探索するために、栽培イネの原種であり、遺伝的多様性を保持しているAAゲノム野生イネ(O. barthii、O. meridionalis、O. rufipogon)と栽培イネ(O.sativa、O.glaberrima)のCPD光回復酵素活性とそのアミノ酸配列を比較解析し、UVB感受性との相関を調査した。その結果、(1)イネのUVB感受性は、草型、自生地、speciesに関係なく、CPD光回復酵素の活性が強く影響すること、(2)野生イネでは様々な推定アミノ酸配列の変異が認められたが、中でも126番目がQからR(Nori-type)に変異すること、さらに296番目がQからH(Sur-type)に変異することによって酵素活性が低下すること、(3)W1299のCPD光回復酵素は、Nori-typeを含む10箇所のアミノ酸配列が変異しているが、高い酵素活性を示すことが明らかになった。