抄録
高等植物のペルオキシソームは、脂肪酸代謝や光呼吸、植物ホルモンの合成などの機能を担うオルガネラである。我々は、ペルオキシソームの形成・機能の分子メカニズムを明らかにするために、シロイヌナズナにおいてペルオキシソームの形態形成に異常を示すapm(aberrant peroxisome morphology)変異体の解析を行ってきた。apm変異体は、ペルオキシソームを緑色蛍光タンパク質(GFP)により可視化したGFP-PTS1形質転換植物を親株として、EMS薬剤による変異源処理を行うことで得られた変異体である。これまで、APM1、APM2、APM4遺伝子がDynamin-related protein 3A、 Peroxin13、Peroxin12であることを明らかにしてきた。本発表では、新たなapm変異体として単離したapm9について報告する。
apm9変異体では、GFPがペルオキシソームのみならずサイトゾルでも観察されることから、APM9タンパク質がペルオキシソームへのタンパク質輸送に関与することが示唆された。マップベースクローニングによりapm9の原因遺伝子を同定したところ、APM9タンパク質は機能未知であり、加えて植物にのみ保存された遺伝子であることが明らかとなった。さらに、APM9遺伝子のタグラインの解析により、APM9の欠損は胚性致死を示し、このことから種子形成におけるAPM9の重要性が示唆された。APM9遺伝子の発現パターン、細胞内局在性についても合わせて議論したい。