抄録
熱ストレスに曝された植物では、細胞全体の翻訳活性が抑制されることが知られている。本研究では、熱ストレスによるシロイヌナズナ培養細胞における翻訳状態の変化を、非ポリソームRNAに対するポリソームRNAの量比(ポリソームスコア)を指標に、マイクロアレイを用いてゲノムワイドに解析した。37℃10分間の熱処理により、解析を行った19099遺伝子の内、大部分の遺伝子のポリソームスコアが減少し、結果としてポリソームスコアの平均値が減少した。この結果は、熱ストレスによる細胞全体の翻訳活性の抑制を反映していると考えられる。熱処理によるポリソームスコアの変化を類似する機能を有する遺伝子群ごとに解析することにより、翻訳段階の制御が熱ストレス応答としての遺伝子発現制御に、重要な役割を果たしている可能性が示唆された。例えば、ribosomal proteinなどのタンパク質合成に関わる遺伝子群は、極端にポリソームスコアが減少する傾向にあった一方、Heat shock protein(Hsp)などはポリソームスコアが減少しにくい傾向にあった。また、これまでの知見に鑑みて熱ストレス応答との関連があると考えられていないが、ribosomal proteinやHsp等と同様に特徴的な挙動を示す機能集団もいくつか認められた。これらの機能集団も、細胞の熱ストレス応答に重要な役割を果たしている可能性が考えられる。