日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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蛍光寿命測定を用いた植物細胞内微少環境の可視化技術の開発
*稲田 のりこ森山 陽介
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p. 1017

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抄録
近年新技術の開発・発達が目覚ましいイメージングの分野において、蛍光寿命測定(Fluorescence Lifetime Imaging Microscopy、FLIM)は、最も注目されている手法の一つである。蛍光寿命とは、蛍光物質が励起されてから基底状態に戻るまでの時間の長さのことを言う。蛍光寿命は各蛍光物質によって決まっているが、この値は物質の置かれている環境によって変化することが知られている。蛍光寿命に変化を与える要因として、最も良く知られ活用されているのがFRETであり、FRETが起きるとドナー蛍光タンパク質の蛍光寿命が著しく減少する。その他、各種蛍光指示薬を用いたpHや金属イオン濃度、酸素濃度変化の測定にも応用されている。FLIMとは蛍光強度に依存しない測定法であり、蛍光物質の濃度や、二つの蛍光タンパク質のスペクトルの重なりなど、蛍光強度測定で問題となる数々のアーティファクトを除くことが出来る、非常にパワフルな手法である。しかし、FLIMはその機器が高額であることより、まだ国内には広く普及するには至っていない。
我々は、FRET測定の為のFLIM使用と平行して、各種蛍光指示薬や蛍光タンパク質を用いた様々な細胞内環境変化の可視化技術の開発を行っている。これらのデータは、病原体応答を始めとした様々な環境の変化に伴う細胞内変化の定量的観察の基盤となることが期待される。
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© 2008 日本植物生理学会
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