抄録
植物では細胞壁を介した細胞間の接着が種々の発生現象を規定している。我々は植物の接着現象の理解を目指して新たな実験系の開発を行なってきた。まずタバコの半数体植物を用い、細胞接着に異常が生じた変異体を解析した。その結果、ホウ素と結合することで細胞接着に重要な働きをするペクチンRG-IIの生合成にかかわるグルクロン酸転移酵素遺伝子が、茎頂や根端のメリステムにおける細胞接着とメリステムの機能維持に重要な働きをしているとともに、めしべや花粉の形成および花粉管の伸長等の生殖成長と受精のプロセスにおける細胞間接着に必須であることが判明した。一方、傷害・接ぎ木などに見られる組織癒合時には、離れた細胞同士が接着し、異なる組織の細胞壁が出会うことで、古い細胞壁の代謝と新生による細胞壁の再構築と融合が生じると考えられる。そこで、シロイヌナズナの花茎をマイクロナイフを用いて半分まで切断し、癒合過程におけるマイクロアレイ法を用いた時系列に沿った網羅的遺伝子発現解析を行なった。その結果,細胞分裂、オーキシンやエチレンなどのホルモン情報伝達因子や各種転写制御因子等に加え、Xyloglucan endotransglycosylase/hydrolaseやFucosyltransferaseなどの細胞壁に関連する遺伝子の発現が、切断後1、3、5日目と大きく変動していることが明らかになった。