日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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顕微吸収スペクトルと顕微蛍光スペクトルの同時測定によるチラコイド膜蛍光量子収率の細胞レベル測定
*熊崎 茂一吉田 隆彦藪田 光教長谷川 慎寺嶋 正秀池上 勇
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p. 0457

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抄録
酸素発生型光合成生物のチラコイド膜中における光合成光化学反応の状態は蛍光量子収率で推定可能であり、パルス変調蛍光測定に代表される方法で活発に利用されている。しかしながら、高解像の光学顕微鏡の下で、チラコイド膜の示す生理的情報を最大限に引き出す方法についてはなお、模索の余地があるのではないかと思われる。我々は、蛍光スペクトルおよび吸収スペクトルを高解像の顕微鏡下で高速に取得できる計測システムを開発し、光合成膜の形状と蛍光量子収率の同時測定に成功した。シアノバクテリア(Anabaena variabilis)と緑藻(Chlorella kessleri)の測定例を報告する。
用いた測定システムは二光子励起蛍光スペクトル顕微鏡(Kumazaki et al., 2007, J. Microsc.)において、ハロゲン照明光をフィルターホイールで単色化し、11色の波長領域で透過率を求めることにより吸収スペクトルが測定できるように改良を行ったものである。これにより、細胞内のクロロフィル蛍光の強度とクロロフィル濃度が同時に測定されるので、クロロフィル濃度と相対蛍光量子収率の差異が推定可能となる。
光合成による独立栄養生育させた細胞と有機栄養を添加した培地で成育させた細胞の間で比較を行った結果、チラコイド膜の3次元分布の差異とともに相対蛍光量子収率の差異を系統的に見出した。
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© 2010 日本植物生理学会
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