抄録
フォトトロピン (phot)は植物の青色光受容体であり、光屈性、気孔開口、葉緑体光定位運動などの光応答反応を制御している。photはFMNを1つ非共有的に結合するLOVドメインをN末端側に2つ (LOV1、LOV2)とSer/ThrキナーゼドメインをC末端側にもつ。FMNが青色光を吸収すると保存されたCys残基とアダクトを形成し、数秒から数分で元に戻るフォトサイクルを示す。主にLOV2によってキナーゼ活性の光制御が行われ、暗所ではキナーゼ活性を抑制している。青色光を受容すると抑制がなくなり自己リン酸化や基質のリン酸化によってシグナルが下流に伝えられると考えられる。
我々はシロイヌナズナphot2 LOV2のフラビン近傍にあるArg513をLysに置換した変異株(R/K変異株)が、強光下(100 μmol m-2 s-1)でわずかに葉緑体逃避反応を示すことを報告した。本研究では、R/K変異株のさらに強光下での葉緑体定位運動を観察した。その結果、200 μmol m-2 s-1の青色光照射によって集合反応、900 μmol m-2 s-1の照射により逃避反応が観察された。これらの結果から、R/K変異株ではWTに比べ葉緑体光定位運動の光感受性が低下し、光反応応答曲線が強光側にシフトしたと考えられる。photによる光感度調節の分子機構について考察する。