抄録
光化学系I循環的電子伝達(CEF)は、C3型よりもC4型植物において活性が高くなっていることから、C4代謝に必要なATP供給を行っていることが示唆されている。Flaveria属植物には、C3型、C4型に加えC3-C4中間型の光合成を行う中間種や、よりC4型に近い光合成を行うC4-like種が存在する。C3型からC4型への進化の過程でC4代謝経路の発達に伴ってCEF系がどのように変化したのか明らかにするために、Flaveria属植物を用いて、CEF活性とそれに関わるタンパク質発現量、チラコイド膜構造の解析を行った。NDH活性は、中間種と比較してC4種とC4-like種で著しく高くなっていた。また、NDH-Hの発現量も同様な差異を示した。一方、P700の酸化速度から見積もられるCEF活性はC4-like種と比較してC4種で著しく高かった。FQR活性に関与するPGR5発現量の増加、また維管束鞘細胞の葉緑体におけるグラナ構造の減少もC4-like種からC4種間で大きな違いが見られた。C4代謝酵素の発現量は中間種で既に増加していることから、CEF系はC4代謝酵素の発現量の上昇と共に強化されたのではなく、進化プロセスの中間型からC4型へ移行する際に発達したと推察される。また、NDH経路がFQR経路より先に発達したことが示唆された。