抄録
光化学系II複合体構成サブユニットD2およびCP43タンパク質はそれぞれ葉緑体psbDおよびpsbC遺伝子にコードされている.これらの遺伝子はpsbD-psbC-psbZオペロンを構成し,psbD上流の青色光応答性プロモーターから共転写される.また,第2シストロンpsbCプロモーターがpsbDコード領域内にあり,ここからも転写が起こる.このオペロンの注目すべき特徴は,psbDコード領域とpsbCコード領域がオーバーラップしていることである.そのため,第2シストロンのpsbCの翻訳が第1シストロンのpsbDの翻訳に依存する可能性が指摘されている.我々はこの可能性を調べるため,タバコ葉緑体由来のin vitro翻訳系を用いて解析を行った.この時,psbDとpsbCの翻訳効率を2種類の異なる蛍光タンパク質でモニターした.その結果,ジシストロニックmRNAからのpsbCの翻訳は,モノシストロニックmRNAからよりも効率がよく,また,第1シストロンの翻訳効率に強く依存することが確認できた.さらに,点変異導入によりコード領域のオーバーラップを解消したところ,psbC翻訳が大幅に減少した.この結果は,psbCの翻訳がpsbDの翻訳に強く依存することを示している.得られた結果から,psbD-psbCの翻訳共役について考察する.