馬蹄肺は,両側肺底部が中縦隔を跨いで結合した非常に稀な先天性の呼吸器血管奇形である.Scimitar症候群などの心血管奇形を伴いやすく,小児で繰り返す肺炎や肺高血圧症の原因となり時に致死的である一方で,他の合併奇形がなく臨床症状に問題がなければ経過観察も考慮される.我々は当初肺葉内肺分画症が疑われていたが,術前精査のCT検査で馬蹄肺と診断し,手術侵襲を回避できた1例を経験した.馬蹄肺は未だ症例数が少ないものの,報告される症例は多彩である.先天性の呼吸器奇形を疑った際には肺の所見だけでなく,動静脈や気管支などの走行にも注意して診断していくことが重要である.