日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第42回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 42_1-P-C-2
会議情報

一般演題(ポスター)
日本人健康成人男性におけるPolypodium leucotomosエキス短期投与のCYP3A4を介するミダゾラム代謝におよぼす影響
*新屋 光一朗西村 有希龍 家圭三邉 武彦藤城 雅也中内 暁博柏渕 弓佳岩瀬 万里子倉田 知光内田 直樹松山 高明木内 祐二
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】近年の健康志向の高まりに伴い,健康食品の利用頻度は増加している.しかし,健康食品の有益な効果について多くの検討がされている一方で,医薬品との併用による安全性については十分に検討されていない.シダ(Polypodium leucotomos, PL)エキスは,紫外線による障害からの皮膚保護作用があり,日焼け止めを目的としたサプリメントとして近年,注目されている.これまで我々は,ヒト肝ミクロソーム画分を用いたin vitro実験系で,PLエキスがチトクロームP450(CYP)3A4活性を競合的に阻害することを示してきた.また,PLエキスをラットに単回経口投与した結果,CYP3Aの指標薬物であるmidazolam (MDZ)のAUCが1.6倍,有意に増加することを明らかにした.本研究では,ヒト生体内においてもPLエキスの短期投与がCYP3A4阻害を介する薬物相互作用を起こし得るか明らかにすることを目的として,臨床研究を実施した.

【方法】被験者として日本人健康成人男性6名を対象とし,open-label,2-period,fixed-sequence studyを行った.第1期はMDZ(1 mg)を単回経口投与し,第2期を5日間以上のwash-out期間を設け実施した.第2期はPLエキス(240 mg)を前日の朝と昼に2回,試験当日の朝に1回,計3回摂取後にMDZを経口投与した. その後,経時的に採血し,血清MDZ濃度をUFLC-MS/MSを用いて測定し,薬物動態学的パラメータを算出し,1期と2期で比較した.

【結果・考察】PLエキス短期投与後(第2期)のMDZの薬物動態学的パラメータは,AUC 0-8: 19.18 ± 3.65 ng・hr/mL, Cmax: 7.81 ± 1.25 ng/mL, t1/2: 2.32 ± 0.35 hrであり,第1期のAUC0-8: 18.74 ± 2.97 ng・hr/mL, Cmax: 8.78 ± 1.67 ng/mL, t1/2: 2.52 ± 0.52 hrであった.両期間を比較して変化はなかった.このことから,ヒトにおいてPLエキス短期投与により,CYP3A4阻害を介する薬物相互作用を引き起こす可能性は低いと考えられた.

【結論】健康成人において,日焼け止めのサプリメントであるPLエキスの短期投与ではCYP3A4阻害による薬物相互作用は示されなかった.

著者関連情報
© 2021 日本臨床薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top