日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第42回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 42_1-P-C-3
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一般演題(ポスター)
モノクローナル抗体製剤における、治験時除外基準の添付文書への反映要因の分析
*有馬 秀樹越智 文也若林 和貴幸田 恭治北原 隆志
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抄録

【目的】治験では投与患者を厳選するが、市販時には投与患者層が拡大する。我々は第41回日本臨床薬理学会学術総会にてモノクローナル抗体製剤(以下、抗体製剤)について、製薬企業へのアンケートによる治験時除外基準(以下、除外基準)と市販時禁忌項目の相違点の実態調査から、安全対策としての除外基準と市販時の禁忌項目が大きく異なり、添付文書への記載もない場合があることを報告した。治験時除外基準と市販時の禁忌項目の乖離等の要因を知ることで患者への安全な薬物療法を提供できると考え、これらの要因を追加分析したので報告する。

【方法】前回報告した解析対象38品目のうち、除外基準、市販時非禁忌、添付文書非記載の回答内容に矛盾の無い28品目を本分析対象とした。がん関連事象、HBV・HCV感染、HIV感染等の12除外基準項目について、企業形態、治験形態、治験区分、薬効、承認時期の条件でそれぞれを分類し、各除外基準が設定されている抗体製剤数の割合(除外基準率)、各除外基準が禁忌に設定されなかった抗体製剤数の比(市販時非禁忌率)、各除外基準が添付文書に記載されていなかった抗体製剤数の比(添付文書非記載率)を算出し比較した。統計解析はFisher正確確率検定(両側)を行った。

【結果・考察】除外基準項目の「結核」の市販時非禁忌率は、薬効による分類の悪性腫瘍治療剤、自己免疫関連疾患治療剤において、それぞれ100%、12.5%であり、有意差(P=0.005)が見られた。添付文書非記載率では企業形態による分類(外資系、内資系)において腎機能障害(83.3%、16.7%、P=0.013)、薬効(悪性腫瘍治療剤、自己免疫関連疾患治療剤)において結核(83.3%、0%、P=0.003)で統計学的に有意であった。なお、除外基準率では承認時期(RMP適用開始の2013年前、後)でがん関連事象、HBV・HCV感染に有意差が見られ、除外基準によっては薬効や企業形態が、治験時では差がなくとも市販時の添付文書への反映要因となっていることが示唆された。

【結論】抗体製剤では主に薬効により、治験時除外基準の市販時の禁忌、添付文書への記載の有無が左右され、一部は企業形態にも影響される。薬剤師は添付文書の内容だけではなく、薬効・企業形態から治験時の患者背景を推測し、新薬の投与時の安全監視を行う必要がある。

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