主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第42回日本臨床薬理学会学術総会
回次: 42
開催地: 仙台
開催日: 2021/12/09 - 2021/12/11
【目的】新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)の流行により,世界各国で治療薬・ワクチン開発の取り組みが進められている。それらの情報を的確に把握することは,本邦での行政施策立案(開発の支援,供給量の確保等)に不可欠である。そこでヒトの臨床試験/研究に関する情報を中心に,国内外の情報ソースから関連情報を収集し,信頼性を評価した上で行政関係者に提供する迅速かつ効率的な方法の確立を目指した。【方法】報道(全国紙,業界紙,医療関係ネットニュース),規制機関/開発企業等のプレスリリース,文献(学術論文のPubMed検索及び医学四大誌の検索),臨床試験登録データベースから,平日毎日,新型コロナウイルス感染症及び各治療薬・ワクチン名で検索し,情報収集した。検索式は,収集した情報の内容をもとに適宜見直しを行った。さらに報道関係の情報の質の評価として,医薬品名及び情報源の記載の有無,報道の迅速性について検討した。【結果・考察】2020年11月~2021年2月に治療薬35品目及びワクチン15品目について収集した情報を,エクセルファイルに製品ごとに1シート作成し,固定情報(治療薬・ワクチンの基本情報)と随時更新される情報(臨床試験,報道,論文からの情報)に分けて記載し,平日毎日,厚生労働省及び国立感染症研究所の関係部署へメール配信した。報告した件数は,新聞(4社)555件,業界紙(2社)126件,医療関係ネットニュース(6社)315件,論文(抄録翻訳)105件,規制当局からの情報115件,開発・製造販売企業プレスリリース164件,臨床試験登録情報146件であった。報道の情報の質を評価したところ,医薬品名/ワクチン名の記載のある割合は,新聞では10~20%であり,業界紙では約50%,医療関係ネットニュースでは60%以上(大半は90~100%)であった。掲載情報内に情報源の記載のある割合は,新聞ならびに業界紙は約60%,医療関係ネットニュースでは80~100%であった。報道の迅速性は,ファイザー/ビオンテック製ワクチンの承認日(または申請日)から初回報道までの日数(タイムラグ)を例として算出したところ,医療関係ネットニュースでは0.3~1.6日,新聞各社では1~3日であり,業界紙では5日であった。【結論】情報ソースにより報道の内容や質,報道回数などに違いがみられた。各情報の収集・提供を行う際には,これらの特性があることを注意喚起する必要があると考えられた。