主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第43回日本臨床薬理学会学術総会
回次: 43
開催地: 横浜
開催日: 2022/11/30 - 2022/12/03
【目的】抗不整脈薬アミオダロン(AMD)は、血中タンパク結合率の高い薬物であり、アルブミン(ALB)だけでなく血清リポタンパク質(LPP)にも結合して血中に存在する。我々は、低密度LPP(LDL)や超低密度LPP(VLDL)が上昇する高トリグリセリド(TG)血症患者において、LPPへの結合型AMDが増加するため、血清中総AMD濃度(結合型+非結合型)が高いことを明らかにした。本研究では、AMDのLPP結合率の変化が、AMDの非結合型分率や体内動態におよぼす影響を推定するため、血清LPP結合を考慮した生理学的薬物速度論(PBPK)モデルを用いて、AMDの体内動態におよぼす血清LPP結合の影響について検討した。
【方法】PBPKモデル解析は、Simcyp Simulator V21.1 (Certara) を用いて実施した。AMDおよびその代謝物デスエチルアミオダロン(DEA)のPBPKモデルとして、血中タンパク結合においてALBへの結合のみを考慮したモデル(ALBモデル)、およびLPP(LDLとVLDL)への結合も考慮したモデル(LPPモデル)を構築し、それらの信頼性を評価した上でシミュレーションに用いた。
【結果・考察】AMDのLPP結合として、既報の血清TG値とLPP結合率の関連性をPBPKモデルに組み込んだ。構築したPBPKモデルは、既報の単回投与および繰り返し投与におけるAMDおよびDEAの血中総濃度を良好に再現できた。LPPモデルで予測されたAMD非結合型分率は、血清TG値と関連するLPP結合率の増加に伴って減少した。また、その変動係数は35.7%であり、ALBモデルの9.5%と比べて既報(31.7%)に近いことから、LPPモデルは血清タンパク結合率の変動に基づくAMDの体内動態の変化を良好に予測すると考えられた。AMD (200 mg/day)繰り返し投与時の定常状態トラフ血中濃度をLPPモデルで予測したところ、血中総AMD濃度は血清TGまたはALB値の増加に従って上昇したが、非結合型AMD濃度の変動はそれに対応していなかった。LPPモデルで予測した血中総濃度と非結合型濃度の相関性はALBモデルと比べて低いことから(相関係数, 0.755 vs 0.974)、高TG血症におけるAMDの血中総濃度は必ずしも非結合型濃度を反映しているとは限らず、AMDの効果/副作用との関連性の低さを説明する一因である可能性が考えられた。
【結論】AMDのPBPKモデル解析から、血清TG値の変動に伴うLPP結合率の変化がAMDの体内動態に影響をおよぼすことが確認された。